文・クラリスブックス 高松

こんなに大きなスクリーンで『遊星からの物体X』を見ることができる日がくるなんて

ジョン・カーペンター監督の最高傑作『遊星からの物体X』がデジタル・リマスター版としてスクリーンに帰ってきた。36年ぶりとのこと。私は先週、丸の内ピカデリーで見てきたが、当初、行こうか迷っていたのだが、友人の、大画面で見たことの興奮冷めやらぬ大絶賛を聞いて、こりゃ行かねば!ということで、とにもかくにも有楽町に飛んでいったのだった。

まだやっているようだが、こちらではそろそろ終わりそう。他の映画館でも始まるとのこと。さすが、人気のようである。

詳しくは、こちらのページに。
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さて、この映画、日本初公開は1982年、私はリバイバルで、1989年か1990年に、三軒茶屋の映画館で『エイリアン』との2本立て!というプログラムで見た。当時私は中学生。二つの映画ともすさまじい作品のため、おそらく、中学生の私は思考停止の状態になったのかもしれない、その時の細かい記憶がない。

幸運なことに映画館で見ることができたわけだが、三軒茶屋の映画館(屋上にバッティングセンターのある方)は、それほどスクリーンは大きくなかったと思う。今回丸の内ピカデリーで見たが、その画面の大きさに圧倒されてしまった。この映画館、数年前に爆音映画祭で『2001年宇宙の旅』を見たのだが、こんなに画面大きかったっけ?

シネコン全盛時代の今、昔ながらのどでかいスクリーンの映画館は、都内ではもはや丸の内ピカデリーだけではなかろうか?かつては1000人も入れる新宿プラザという超巨大映画館があったし、それ以外にも、私の世代では渋谷パンテオンも大きかった。

丸の内ピカデリー。綺麗なOLさんがブランド店やアクセサリー屋さんが並ぶウッドデッギをつかつかと忙しなく行き交う、そんな有楽町のキラキラした大人の街で、なぜこの映画、『遊星からの物体X』が上映しているのだろうかと、一瞬時空の揺らぎすら感じてしまった。男しか出てこない映画、男くささ丸出しの映画。我々観客も90パーセント以上が男、しかも、いかにも映画秘宝っぽい雰囲気むき出しの面々。そんな、ある意味とても素敵な空間の中で見ることができた幸せは、何ものにも代え難い。映画館で映画を見る、という行為は、単に見る、というだけではなく、その行動そのものがすでに映画を見ていることになるのかもしれない。

ところで私は蟹や海老がそれほど得意じゃない。食べろと言われれば食べられるが、あまり好んで食べようとはしない。特に蟹は、あの鋭角に曲がった足がなんとも不気味で苦手だ。味というより、その形が苦手なのだが、高価なものであればあるほど、例えば自分では行くことができないような、ちょっといい感じの日本料理屋さんや料亭などではそのまんまの姿で我々の前に出てくる事があって、そういう時は決まって食べなければならないという状況に追い込まれるわけである・・・

今回久々『遊星からの物体X』を映画館で見たわけだが、私が蟹が苦手なのは、この映画を中学生の時に見たからだと、丸の内ピカデリーのその巨大スクリーンは教えてくれたのだった。