文・クラリスブックス 高松

 

気の合う友達やスタッフと時々映画について語り合う機会を設けている。新作やら旧作やら、最近見たものや、昔見て記憶に残っているものを夜中まで語り合うのだが、そしていつもあっという間に楽しい時間は過ぎていき、語っても語っても語り尽くせない映画の奥深さに驚くばかり、と同時に、かなりレベルの高い映画論を我々は語っているのではないだろうかと思うのだが、それはそうとして、ふと、自分たちのベスト映画ってなんだろう、と考えた。

オールタイムベストとか、名刺代わりの10本とか、ツイッターやインスタではそういった言葉でいろいろと自分の好きな映画を紹介しあっているが、正直、なかなか選ぶことができない。

昔は5〜6本すらすらと出すことができたものだが、ここ5〜6年で昔のリバリバルをいろいろと映画館で見るにつけ、いよいよベストを選ぶのが難しくなってきた。
例えばエドワード・ヤンの『クーリンチェ少年殺人事件』、ビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』『エル・スール』、フリッツ・ラングの『メトロポリス』、ベルトリッチ『暗殺の森』、タルコフスキー『惑星ソラリス』『ノスタルジア』『サクリファイス』、アブデラティフ・ケシシュ『アデル、ブルーは熱い色』、メルヴィル『海の沈黙』、成瀬巳喜男『浮雲』、イ・チャンドン『オアシス』、クストリッツァ『アンダーグラウンド』、カラトーゾフ『怒りのキューバ』、アピチャッポン『光りの墓』などなど。あるいは最近の映画『ローマ』『幸福なラザロ』といった作品が加わると、ベストを選ぶのはまず不可能になってくる。

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ただ、そもそもベスト映画といっても、当たり前の話だが、それは個人的なものである。私が映画館で一番最初に見たのは『オーメン2』だが、この映画は単なるスプラッター映画でしかないけれど、それでも私にとっては特に記憶に残る作品だし、『スターウォーズ ジェダイの復讐』の衝撃は今でも覚えているし、中学生の時に見た『遊星からの物体X』も忘れられないし、初めて大人の映画を体験した感のある『ブロード・キャスト・ニュース』も留めておきたい作品である。クラリス・スターリングが活躍する『羊たちの沈黙』ももちろん忘れられない作品だ。それらはベストには入らないかもしれないが、私にとっては大切な映画たちなので、極々個人的な意味でのベストには入るかもしれない。

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友達との語らいの中で、一年に一度、自分のベストを書き記すようにしているという話が出て、それはとてもいいアイデアだと思った。
一年に一度、ベスト10本、あるいは20本、いや、30本を書き記す。それは毎年更新され、中には脱落する作品もあれば、新たに加わるものもあるだろう。そうやって5年、10年と積み重ねていって、それでもしっかり残っている作品が本当の意味でのベストになるのかもしれない。そうやっていくと、最終的には、死ぬ間際にようやく自分のベスト10本を出すことができる。なんならお墓の周りの卒塔婆に映画のタイトルを記すのもいいだろう。皆がそうすれば、お墓参りも楽しいものになるかもしれない。この人はこんな映画を選んだのか、この人とは趣味が合いそうだ、などと、楽しい想像が膨らむ。
私のお墓の場合、いろいろな作品の中で、やはり記憶に残る映画として『オーメン2』を選んだとして、お墓の周りにドーンと『オーメン2』と書かれた卒塔婆が並んでいるのは、不気味ではあるが、けっこう風景に溶け込むのではないかと思う。

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星の数ほど映画はあるから、私の見ている映画など氷山の一角の、それまた一角に過ぎない。だから、映画を見れば見る程、いよいよベストを選ぶということが難しくなってくる。ただ、何を選ぶか考えること、それ自体がとても楽しいものである。