クラリスブックス 高松

 

渋谷シネマヴェーラでの特集上映「ナチスと映画3」には、今の日本で見るべき作品が数多く上映されており、私は、猛暑とコロナとその他心身共に疲れた体を休めるという目的で、クラリスブックスを開業して初めての夏休みを、しかも6日間も取ったのだが、結局家でごろごろすることなく、猛暑の中、足繁く映画館に通ったのだった。

この特集上映には「忍び寄る全体主義の恐怖」という副題が付られているが、これは、全体主義の本質をよく表している、素晴らしくも不気味なタイトルであると言える。ファシズムはいつの間にか隣に潜んでいて、気がつくと両隣から挟まれる。

ロベルト・ロッセリーニやフリッツ・ラング、エルンスト・ルビッチの作品のように、映画史的な大傑作が映画館で上映されるとあって、この猛暑、いや酷暑の中、多くの人が見に来ていた。驚いたと同時に、嬉しくもあった。
一昔前であれば、例えば1942年製作の『生きるべきか死ぬべきか』を見れば、ブラックコメディの傑作と評してもおかしくないかもしれないが、今のこの日本の悲惨な政治状況を鑑みると、素直に笑うことができない自分を発見する。そして、その過酷な状況下にあって、むしろその現状を笑いとして映画で表現した天才ルビッチに、私は心底感動し、尊敬する。

見た映画を一つ一つ書き記すのはまた別の機会として、、、ファシズムはじわりじわりと忍び寄るということを、今回多くの映画を見たことによって痛感する結果となった。そもそも、私は小さい頃から辛い現実から逃れるために映画館に駆け込んでいたという面もなくはなかったが、今回、逆に映画から現実の恐ろしさをむしろまざまざと見せつけられることとなった。

ファシズムはいつの間にか我々の周りをとり囲む。我々市民は自らの頭で考えて行動しなければならない。民主主義という制度は、何かを成すためには徹底的に議論しなければならず、そして同時に多くのプロセスが必要で、その為、結果的に多くの時間を費やすことになる。それで安易な手法、手間がかからない方に進んでしまう。考えることをやめれば負けてしまう。
この特集上映で見た数々の映画、それはファシズム前夜の話であったり、ファシズム完成後、それに抗う人々の話であったが、ここまで映画から刺激を受けたことは久々であった。改めて、渋谷シネマヴェーラに感謝したい。

 

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