文・クラリスブックス 高松

クラリスブックスでは、月に一回、読書会なるものを開催している。課題図書を決めて、参加者全員で意見を言い合うというもので、特に学術的なわけでも、何かをまとめるということもせず、悪くいえばだらだらと、よく言えば和気あいあいとした会である。

なぜこのようなことをしているかというと、単純に、私が本を読みたいから、もっと言えば、本を読む習慣を身につけたいから。

読書会を開催すれば、主催者である私やスタッフは、否が応でも読まなければならない(そうは言っても、実は全部読み終わらず参加した会が、何回かある)。仕事で本を扱っている身としては、日常的に読書くらいしておきたい、しかし、なかなか本を読むのは大変、だけど自分で読書会を開催すれば、つまり自分で自分を追い込むことで、読書をする習慣が身に付くようになる、こんな発想である。

このような単純な考えから始めた読書会ではあるが、得るものがとてもあった。

まず、店内で開催するので、月に一度、それなりの棚整理ができる。当店はそれほど広くないので、本棚を移動してうまくスペースを作る。読書会終了後、その本棚を元に戻すわけだが、同じようにならない。しかしそのことで、結果的に棚の入れ替えをした形になる。また、同時に掃除もできる。さらに、読書会参加者の方が店の本を買ってくれることもあるし、ついでに本を持ってきてくれて、売っていただけることもある。

古本買取クラリスブックス 読書会 日本文学 海外文学 哲学
▲読書会の日は18時までの営業とし、棚を移動してスペースを確保する。読書会はいつも19時から。

読書会自体以外に、このようにいろいろと得るものがあるので続いているのかもしれない。

しかしそうは言っても、本を読み続けるのは、なかなか大変であった。
1年間に12冊、もう4年以上続けているので、50冊は読んだことになる。

仕事が忙しい時や、立て続けに大きな本の買い取りがあったりすると、正直きつい。私の人生の中で、ここまでコンスタントに本を読むことができた時期はない。高校生から大学生にかけて、いわゆる乱読の時期というのは、あったことはあった。ただ、やはり若さ故にできたことであって、仕事、しかも、いつだめになるとも限らない小さな古書店を営んでいる身としては、なかなか大変である。

一ヶ月に何冊も、人によっては何十冊も読む方がいる。そもそも、読むのが速い方である。私は遅い。頭の中で読む速さは、声に出して読む速さとあまり変わらない。そんなものだから、1ヶ月に1冊、なかなか大変である。

さて、昨年2017年に読書会の課題図書にしたものを挙げてみる。

1月 田中小実昌『ポロポロ』

2月 アーサー・C・クラーク『幼年期の終り』

3月 小林秀雄『モオツァルト・無常ということ』

4月 ポー『黒猫』『アッシャー家の崩壊』

5月 夢野久作『氷の涯』

6月 スタンダール『赤と黒』

7月 高橋源一郎『優雅で感傷的な日本野球』

8月 イプセン『人形の家』

9月 永井荷風『ぼく東綺譚』

10月 モーパッサン『脂肪の塊』

11月 須賀敦子『ミラノ 霧の風景』

12月 ヴァージニア・ウルフ『ダロウェイ夫人』

外国のものと日本のもの、交互に選んでいる。また基本的に、現代文学より、いわゆる、岩波文庫に入っているようなものを選んでいる。それは店主である私の考えが反映した結果であるが、そもそもの読書会開催の理由の一つに、いろいろな作品を読みたい、という考えがある。だから、なるべく自分自身が選ばないような作品を読みたいけれど、しかしどうしてもそこには主催者の色が反映されてしまう。ただ、課題図書は私一人が決めるわけではなく、スタッフと相談して考える、場合によっては、常連のお客様とのなにげない会話から決まることもある。昨年読んだもののなかで、永井荷風『ぼく東綺譚』や、田中小実昌『ポロポロ』は、私自身は、読書会で選ばなければ読まなかった作品だろう。

古本買取クラリスブックス 読書会 日本文学 古本買取クラリスブックス 読書会 日本文学

先ほど、いわゆる岩波文庫に入っているようなもの、と書いたが、それは、なるべく入手しやすいもの、という意味でもある。古典的名作であればあるほど、文庫になっているからだ。岩波文庫や新潮文庫、海外のものだと、最近では光文社の古典新訳シリーズに入っていることもある。

少し長くなってしまったので、この続きは次回に。次回は、いままで取り上げた作品の中で印象的だったもの、また、私がそれ以外に読んだ本などについて、さらに、当店の読書会の傾向など、少しご紹介したい。

 

文・クラリスブックス 高松