2月22日、「哲学と読書 カント『純粋理性批判』入門の入門」と題して、読書会の特別バージョンを行いました。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。

カント哲学古本買取クラリスブックス

まず、そもそもこの催しは、店主である私高松が、大学で哲学を勉強していたにもかかわらず、カント哲学についてよくわかっていないので、この際しっかり勉強したい、ちゃんと理解できずとも、カントについての入門書を読めるくらいには理解したい、などと考えて持ち上がった、かなりわがままな企画でした。

今回ゲストとして、東京大学大学院総合文化研究科、博士課程の網谷壮介さんにお越しいただきましたが、網谷さんとの出会いは偶然で、少し前にお客様として当店にお越しいただき、哲学のことについて店頭でお話しましたところ、その語り口がとてもわかりやすく、そして興味深いお話をいろいろとしてくださったので、これはぜひもっと詳しく教えていただきたい!と思って、この催しの話をさせていただき、ゲストとして来ていただけるようお願いしたのでした。

その話が持ち上がったのは昨年の12月。当初、なかなか人が集まらないのではないか、ぜんぜん来てくれなかったらどうしよう、などと思っておりましたが、蓋を開けたら、たくさんの方からご参加ご希望のご連絡をいただき、最終的には予約を閉め切ってしまう形になってしまったほどでした。
ご参加いただけなかった皆様、誠に申し訳ございませんでした。

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私のわがままな要望から始まった催しでしたが、結果的には大成功で、勝手ながら、開催してとてもよかったと思いました。

さて、肝心のカントの『純粋理性批判』についてなのですが、それをしっかりと理解できたかと言われれば、それはなかなか難しいところがあります。ただ、カント哲学の入門書を読むのであれば、なんとか頑張って読み進められるようにはなったかな、と思います。そしてそれ以上に、カントとその哲学について、いままで以上に興味を持つことができました。それが一番大きかったように思います。そもそも、カント哲学を研究して一生を終える専門家もいるくらいです。そう簡単に理解できるわけはありません。ご参加いただきました皆様も、完全に理解できた、という方はいなかったかもしれません。

しかしこれをきっかけに、カント、そして哲学全般についてさらにご自身で勉強を進めることはできるのでは、と思います。今回のこの催しがその出発点になっていれば、とても嬉しく思います。私は改めて、人間いくつになっても勉強はできるものなのだな、と思いました。知識に対する欲求には限りがないもので、それがあるからこそ人間は生きていけるのでは、とすら思ってしまいました。

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網谷さんの口から語られたカント哲学について、このブログでまとめるというのは正直なかなか難しく、まだまだじっくり自分自身で噛みしめてからでないと、文章にするのは大変です。
この『純粋理性批判』という書物は、ドイツ語としても大変難しく書かれているようで、さらに、カントは例えが下手というか、人に説明するのが苦手というか、内容の難しさ以前の問題として、そういった文章の問題もあるようでした。参加者の一人で、当店のスタッフである石村が言ったように、それはまるで「判例のない法律書」のようです。

ただ一つだけ言えることは、今まで、「アンチノミー」「アプリオリ」「悟性」「普遍妥当性」などという言葉に何かしらアレルギーというか、日本語として読めるけど、全く理解できない、意味不明な単語、という印象しかなかったものが、少なくともそのアレルギーは多少緩和されたかな、と思えるし、また、いわゆる「コペルニクス的転回」という言葉によってカント哲学を、単純に「発想の逆転」などと理解していたのが、実は決してそのようなものではなく、理性の働きや限界をきっちり考える事、まさにそのこと自体が、いわゆる「コペルニクス的転回」的な出来事だった、と考えられるようになった、こういったことはとても大きな収穫でした。

カントは人間の理性というものをあらゆる角度から生涯を通じて徹底的に考え抜いた人ですが、それは最終的には、晩年の政治論文『永遠平和のために』に繋がるのではないか、と考えられないか、と思いました。カントの思想に、理性愛、そして人間愛といったものを感じ取ることができたからです。

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カントはケーニヒスベルク(現在のロシア領カリーニングラード)に生まれ、生涯その地を離れることはありませんでした。ケーニヒスベルクはバルト海に面した港町で、それほど大きな都市ではなく、面積は東京都23区の三分の一位です。しかし貿易が盛んで、さまざまな物資が行き交う場所でしたので、いろいろな資料をカントは入手できたようでした。
また、カントはとても規則正しい生活をしたことで知られ、昼の散歩は特に時間に正確だったため、周りの人は、カントが散歩することで今何時かがわかったといいます。 その散歩を唯一忘れてしまったのは、ルソーの『エミール』を読みふけっていたときだけでした。

徹底的に人間の理性について考え続けたカント、生涯同じ場所にとどまり、規則正しい生活をしつづけた、そのような人物が哲学史の一大転換をもたらしたというのは、なんだか少し逆説的な感じもします。いろいろなところに旅に出て、波瀾万丈な人生を送った人物が、その生き方そのままの画期的革命的な哲学を打ち立てた、というのとはまるで異なります。しかし考えてみると、彼が問題としていた人間の理性なるものは、結局どこかに行って、何かを見たり聞いたり経験したところで、特に変わるものではありません。ジャングルの奥地に行っても、大海原を彷徨っても、果ては地球を飛び出して月に行ったり火星に行ったり、ロケットでアンドロメダ星雲に旅行したところで、人間はそもそも時間と空間に制約された存在である以上、その人間の理性にも限界があるわけで、結局、じっと、ただただ考え続けるしかない、それがカントの選んだ道だったように思えます。

今回の読書会拡大バージョン、「哲学と読書」ですが、最初に書いた通り、そもそもの企画の始まりは、私個人の勝手な願望だったのですが、私と同様に、いわゆる哲学の初歩について、もっと掘り下げて勉強したい、詳しく知りたい、と思う方が多くいらっしゃるということがわかりましたので、できればこの会を続けていければ、と目論んでおります。いきなりカントという、とてつもない巨人を取り上げたためか、なかなかこのブログでまとめるのも大変だったため、ここでは今回の催しの大枠を説明することくらいしかできませんでした。力不足で申し訳ありません。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

クラリスブックス店主 高松

 

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