雑誌の「ぴあ」には、相当お世話になった。

中学から高校にかけて、映画館に通うようになった私は、カバンに最新の「ぴあ」を入れて、渋谷によく出かけたものである。80年代後半から90年代前半の話である。

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少し前、ウェブマガジン「アパートメント」に記事を載せていただいた時、昔の思い出話をつらつらと書いて、ふと、「ぴあ」を読み返したくなり、なんとか探して手に入れた。改めて読み返してみると、この雑誌の情報量に圧倒された。

ウェブマガジン「アパートメント」の私の記事はこちらからどうぞ。
http://apartment-home.net/author/clarisbooks/

「ぴあ」には、映画からライブ、コンサート情報、美術館などの展覧会情報、さらにテレビ欄やラジオの番組表も載っている。しかも、ラジオの番組表には、流す曲名まで掲載(曲の時間も掲載!)。もちろんその他細かいイベント情報、はみ出し情報などなど、これ一冊あれば、他のものは必要なし。最新号を1冊カバンに入れておけば、1〜2週間困ることはなかった。ものすごいメディアである。そう考えると、情報ツールとしては、今よりも優れているのではないかと思われる。

今は、スマホやパソコンでそういった情報を収集する。ただ、なかなかまとまっているものがないのが現状である。
映画や音楽など、ジャンル別であれば、ある程度まとまっているものも、なくはない。ただ、余計な広告やら不要な情報が多く、結局、自分で自発的に、例えば映画であれば、映画館を個別にフォローしたりブックマークして調べなければならない。うまく使いこなすことができる人は事足りるのだろうが、なかなか使いこなすことができない場合、よほど積極的に情報を追い求めないと、多数の求めるものに流されてしまう。

グーグルは、「正確な情報」「新しい情報」「見やすく分かりやすいか」そして、「多くの人が見ている情報」を優先する。細かいアルゴリズムは私には分からないし、けっこう頻繁に変更されるらしいが、おおよそ、上のような条件が重要視されるようである。だから、ほんとに細かい情報、しかも、誰も関心のないような情報を調べたい時、何ページもいかないとたどりつけないことがある。結局得たい情報に到達できず、結果的に、我々が得る情報は平均化・大衆化され、はっきり言って、面白くないものになる。

ちょっと話が逸れたが、紙媒体の雑誌である「ぴあ」は、端から端まで情報満載で、使い方は自由自在。一見現在のネットも自分で使いこなしてしっかり情報を得ているようだが、実はいいように使われているのが現状である。

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1991年の11/28号の表紙の下に小さく「宮沢りえ写真展 Santa Fe開催」とある。これを見た世の男たちは、その記事がどこに載っているのか必至になってページをめくって、結局最後の方、コマ一つに、小さな写真付で少し紹介されているところに辿り着いてがっかりするわけだが、そこに行き着くまでに、相当な情報が目に入って、おそらくほとんどの人はどこかで脱線して、映画に行ったり、ライブに行ったり、何かの講演を聞きに行ったりしたことだろう。この僅か数行「宮沢りえ写真展 Santa Fe開催」とあるだけで、紙媒体であれば、より多くの情報を入手することになる。
ネットであれば、検索して、終わり。しかも、途中にいらない広告が入ってきて、それに乗せられて別の道に進んでしまうかもしれない。要するに、うまく誘導させられるわけである。

情報源としての雑誌の役目は終わり、それはネットにとって替わられた。ネットは便利、であることは否定しないが、それで結局人々が幸せかどうかは、また別の問題だろう。

「ぴあ」の誌面がどんなものだったか、ほんの少しこちらでご紹介。

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▲50音順で現在公開している映画がずらり。ジャンル分けが楽しく、ジャンルを意味するいろいろなアイコン、映画マークがタイトルについている。私はこのアイコンを見て、なんとなく見る映画を決めていた。
よく見ると、『東京物語』には、「ほのぼのとした気分になりたい」「なつかしい思い出に浸りたい」マークがついている。また、これを見るとわかるように、ポルノ映画がけっこうやっていて、これもまた時代を感じさせる。

 

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▲ラジオ欄のものすごい情報量に圧倒される。以前ブログでスタッフの石村が書いた“エアチェック”は、このラジオ欄を見て、ラジカセで録音することである。
よろしければそのブログもどうぞ。

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▲クロスオーバー・イレブン 洋楽が良く流れていたようで、曲のタイトル、時間もしっかり載っている。

 

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▲1986年1月号の「ぴあ」。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『グーニーズ』が銀座の映画館で上映しているという、まさに夢のような時代。タイトルの横の数字は、映画欄冒頭のレビューの順番。
この時代の「ぴあ」を見ていると、話せる人とは丸一日話していられそう。

 

 

文・クラリスブックス 高松