2月2日の読書会、プラトンの「饗宴」、無事終了いたしました。

こんにちは、店主の高松です。
2月2日(日)19時より開催しました読書会のご報告をいたします。

課題図書 プラトン「饗宴」

今回がクラリスブックスで開催する読書会としては、2回目となります。
前回はシェイクスピアの「マクベス」でした。
その時の様子はこちらをご覧ください。

シェイクスピアの「マクベス」同様、いやそれ以上の古典中の古典ということもあり、さまざまな議論をすることができました。また、今回の読書会では、私の大学時代の友人に駆けつけてもらいました。大学院で専門的にプラトン作品をギリシア語で読んでいた人なので、細かい言葉の用法や、いわゆるプラトン哲学についての詳細な話などが出て、読書会というより、勉強会といった形になったかと思います。

クラリスブックス プラトン「饗宴」
クラリスブックス読書会 プラトン「饗宴」

プラトンの「饗宴」は、さすが古典ということもあり、日本では数多くの訳本が出版されています。最近、光文社古典新訳シリーズでも出たこともあり、より身近な作品になったのではないかと思います。岩波文庫版が多かったのですが、参加者の中にはそれ以外の版を読んできてくれた方もいました。
現在比較的容易に入手できるものとしては、岩波文庫版(久保勉訳)、新潮文庫版(森進一訳)、光文社古典新訳文庫(中澤務訳)の三つだと思います。私高松は、岩波書店版のプラトン全集第5巻(鈴木照雄訳)を読みました。

やはり昔の訳ほど、少し固いというか、言い回しがどうしても現代風ではなく、今読むと分かりにくい印象の場合があります。ただ、だからといってよくない訳というわけではなく、哲学書、ことにプラトンの著作の場合、対話で話が進むので、多少文学作品的な雰囲気も出しつつ、哲学書として言葉を正確に日本語として伝えなければならないということもあるので、無責任な言い方ですが、結局その善し悪しは、読んだ人の好き嫌いになってしまうかな、と思いました。さらに厄介なのは、プラトン自身が言葉を正確に統一していない場合があり、そこが分かりにくくしている要因なのかもしれません。
今回の「饗宴」の場合、テーマはエロスですが、この言葉自体、ギリシア神話の神エロスだったり、動詞や名詞として「愛する」「愛、恋」と使われたりと、訳者が文脈を読み解き、適宜日本語としていろいろな訳を選択している場合が多々あります。先に挙げた訳本には副題が付いているものがありますが、その副題が「恋について」だったり「愛について」だったりと、統一されていません。当たり前ですが、一番いいのは原書で読むこと。しかし、ギリシア語は非常に非情に難解な言葉なので、結局「エロス」という言葉をどのように捉えるか、ギリシア語の原書を訳する行為そのものがこの作品を研究し理解することにもなるのでした。古代ギリシア哲学を研究するということは、その実ギリシア語原典を日本語に訳すことと同じ場合があります。訳するのが面倒だな〜大変だな〜などと、大学生の時に思いましたが、そう思ってしまった時点でギリシア哲学と正面から向き合っていないということになってしまうのです。
「響宴」において、「エロス」を「愛」と訳すか「恋」と訳すか、そのまま「エロス」とするか、そこにこの作品に対する訳者それぞれの考え方が現れるのです。

クラリスブックス読書会 プラトン「饗宴」古本屋

作品冒頭、アポロドロスが追っかけられて、「またんかい」と呼び止められる場面がありました(岩波文庫版)。他の版でも少し砕けた表現をしていて「これ待たないか」としているものもありました(プラトン全集)。
プラトンの作品というと、読んだことのない人にはどうしても難しいという印象がありますが、こんなあっけらかんとした漫才みたいな言葉ひとつで一気に読みやすくなることもあります。

参加者のほとんどが今回初めてこの作品を読んだのですが、中には大学の時、ゼミに入るために読まなければならない作品だったが、結局読むことなく、しかしなぜかゼミに入ることができたりして、この機会にようやく読むことができたという方もいらっしゃいました。

クラリスブックス読書会 プラトン「饗宴」古書店

最初議論の中心となったのは、この作品の構造について。
「響宴」では、第三者の報告を語るという形式で話が進みます。しかもその報告は直接見聞きしたものではなく、又聞きで聞いたものを語るという、入れ子状になっているのです。そこが少し複雑で読みにくいのですが、その反面、このような構造によって、我々読者はこの作品で催された響宴を一つの歴史的事実として認識し、報告者=作者であるプラトンが後世にこの作品を残したいという強い意志を感じることすらできるようになっているのです。
(「響宴」以外にこのような構造をなしている作品としては、「テアイテトス」が挙げられる)

具体的には、この響宴の直接の参加者であるアリストデモスからの報告を受けて、アポロドロスが物語を語るという形式ですが、作中後半に語られる、“第二の「ソクラテスの弁明」”とも思えるソクラテス擁護、ソクラテス讃美を描くにあたり、プラトンは、アポロドロスという、ソクラテスの弟子としてはまだまだ新参者である人物に直接の報告をゆだね、その話の元に関しては、逆に昔からの弟子で、忠実熱心なアリストデモスに委ねることによって、その言葉をより真実に近づけようとしたのではないか、と考えられるのです。その結果、この作品が“第二の「ソクラテスの弁明」”とまで言われるようになったのだと思います。

ギリシア神話の神々の一人エロスを讃える酒宴として催された響宴ですが、まずは医者や喜劇作家などがそれぞれ自身の考えを語ります。天上の愛と地上の愛の違い、神によって二つに切り裂かれた人間がもう一方を希求する、その行為が愛なのだとする説、永遠を求める行為、子孫を残す行為が愛なのだとする考えなど、その他実にさまざまなユニークな議論が展開されますが、ようやくソクラテスがエロスについて語りだします。そしてここでも不思議な構造を取っています。ソクラテスは「弁明」ように自身の考えを声高々に語るのではなく、まずは謎の女性ディオディマとの対話を報告し、そしてその後ディオディマの考えをそのまま伝えるという形を取っています。ソクラテスの考えなのか、ディオティマの考えなのか、あるいは作者プラトンの思想なのか、なにか判然としません。

プラトンは自身の作品すべてに師匠であったソクラテスを登場させています。そのソクラテスから発せられる言葉の数々は、果たして本当にソクラテス自身の言葉なのか、それともプラトンの代弁なのか。これは思想史的な観点から常に研究されてきたところですが、この作品「響宴」は、初めてプラトンの哲学の根幹をなす思想、イデア論の端緒が見えてきたと言われている作品です。つまりプラトンは、直接ソクラテスに語らせるのではなく、ほとんど遠慮しがちに自身の哲学を師匠であったソクラテスに語らせたく、このような構造を取ったのではないか、そのように考えられるのです。その結果、このエロスに関する議論は、神エロスについてではなく、イデア論としてのエロスの物語へと変貌してしまっているのです。ここがこの作品をよりわかりにくくしているのだと思われます。

上に挙げたように、読書会後半では自由な議論が展開され、プラトンのイデア論、そしてその説明として「国家」で登場する、有名な「洞窟のたとえ」について話されました。また、プラトンの作品に登場する主人公ソクラテスと、作者であるプラトンとの関係、ソクラテスの思想とプラトンの思想の関係についてなど、かなり専門的な議論ができました。

ソクラテスの説くアレテー(徳)について、そしてその教えを受け、自身の思想の中に組み入れ拡大発展させたプラトンのイデア論についてなどなど、話はもちろん尽きません。
この「饗宴」は2500年もの長きにわたって人々に読まれ続けてきました。ルネサンス期の哲学者マルシリオ・フィチーノは、コジモ・デ・メディチの要請を受け、ギリシア語のプラトン全集をラテン語に訳しました。そして、この「饗宴」と同じ体裁をとった酒宴を自身のアカデミーで開催し、「恋の形而上学 プラトンの「饗宴」について」という書物で著しています。さらに遡れば、紀元3世紀の哲学者プロティノスは、プラトン哲学を研究し、それは結果的に、後世「新プラトン主義」と言われ、特にキリスト教成立発展に多大な影響を及ぼしたのではないか、と考えられています。プラトンのイデア論をさらに拡大解釈し、「一者」という概念を打ち出したプロティノスの哲学は、一神教のキリスト教にとっては、その難解な神学を分かりやすく説明する上で非常に有効だったのではないか、当時様々な派閥が存在したキリスト教の中で、それらを統一することができる思想として使われたのではないか。ここらへんのダイナミックな思想史的潮流には胸躍らされるばかりです。

クラリスブックス読書会 プラトン「饗宴」 参加者の集合写真

ともかく、古今東西プラトンの影響を受けなかった哲学者はおそらく存在しないし、現代思想の発端であるニーチェも、プラトン哲学に多大な影響を受けています。そう考えると、古典とかクラシックという言葉の中には、永遠とか普遍という意味が含まれているのだと思えるのです。
今回プラトンの「饗宴」を読書会の課題図書にするにあたり、大学時代に勉強をした私としては、少しでも多くの方に読んでもらえたことを、ほんとうにうれしく思いました。プラトンの一連の対話篇を読み、そして研究するという行為は、哲学を勉強する、というよりも、もっと直球で、そのまま、哲学する!というこのなのだと、改めて実感しました。

まだまだ読まなければならない本はたくさんあります。しかし人の人生は長そうで実は短いものです。有効に使えるよう、考えていきたいと思います。そしてクラリスブックスでは、これからもこのような会を開催していきたいと、強く思ったのでした。

さて、次回の読書会は3月2日、課題図書はいとうせいこうの「想像ラジオ」になりました。またこれ以外にも、クラリスブックスとしてはいろいろな本を取り上げていきたいと思っております。ブログやツイッター、フェイスブックにてお知らせしていきます。どうぞよろしくお願いいたします。

********************************
クラリスブックスでは、随時古本の買取を行っております。
ご不要の書籍等ございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください!
古本買取フォームはこちらからどうぞ!
直接メール、お電話、FAXをいただいても結構です。
・メール info@clarisbooks.com
・電話 03-6407-8506
・FAX 03-6407-8512
営業時間
平日12時-20時
日曜祝日12時-19時
定休日 月曜日(祝日の場合は営業いたします)
誠心誠意、対応させていただきます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
クラリスブックスホームページ http://clarisbooks.com/
クラリスブックス買取専用ページ http://kaitori.clarisbooks.com/
********************************

カテゴリー: クラリスブックスについて, 読書会 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です