「スターシップ・トゥルーパーズ」イヤー は、こない。

スターシップ・トゥルーパーズ

文・石鍋健太

201511月、PS4Xbox OnePC向けソフト「Star Wars バトルフロント」発売。そして12月、「スター・ウォーズ ep7 フォースの覚醒」劇場公開。いまさらながら、すっかり「スター・ウォーズ」イヤーだ。映画はもちろん楽しみだけれど、それ以上に「バトルフロント」公式サイトのゲームプレイトレーラーを見て胸と目頭が熱くなった。約10年前、暇な大学生の自分にこれが与えられていたら間違いなく没頭しただろう、と。まだいまの時点では冷静でいられるが、発売が近づいてきたら“ゲームのある生活”への復帰を本気で検討し泣く泣く断念するくらいのことにはなりそうな気がする。

とはいえ、「スター」といえば私にとっては俄然「スターシップ・トゥルーパーズ」なのだ。これは揺るがない。「スター・ウォーズ」イヤーだからこそ、この夏あえてあの鬼才ポール・バーホーベンの奇跡の傑作「スターシップ・トゥルーパーズ」について熱く語りたい。

■ やつらは群れでやってくる

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スターシップ・トゥルーパーズ

「スターシップ・トゥルーパーズ」の劇場公開は1997年、人間が大量の敵を蹴散らしたり巨大な敵に単独で挑んだりするゲームや映画の走りだったのではないか。最新のSFX技術が駆使されているとのことで当時は一瞬かなり話題になったのだが、今ではどちらかといえば“カルト的な人気”みたいにいわれることが多い。虫の動きはものすごいのに、同じバーホーベン監督作の「トータルリコール」同様、建物や機器類、宇宙船などがへんに安っぽくてダンボールで手作りしたみたいでそこがすごくいい。とかいうとさらに  “ カルト的な人気 ” っぽくなる。

ッスターシップ・トゥルーパーズ

近未来、民主主義は崩壊し、新政府「地球連邦」では軍部中心のユートピア社会が築かれている、というのが舞台設定だ。人種・男女の差別はなく誰もが平等だが、学校では教師が生徒に「暴力こそ最高の権威」と説き、市民権を得るには兵役を経なければられない。そんな人類は銀河系開発・殖民を進める途上で昆虫型宇宙生物「アラクニド・バグズ」と遭遇、全面戦争に突入する。

みんな一途で真面目にがんばる

スターシップ・トゥルーパーズ

この虫 vs 人、とにかくでかい虫だらけの戦争に翻弄される若者たちの青春とか成長とかが描かれるのだが、驚くべきことに登場する誰一人として軍事政権に不満も疑念も小さな違和感すらも抱かず、みんな自分たちが置かれている状況を完璧に受け入れた上でひたすら一途に真面目にものすごくがんばる。「市民権を得たいから兵士になるわ」との言葉に「それおかしくない?」と返す誰かがいてもよさそうなのに、誰も何もいわない。地球各所に現体制への反乱分子が潜んでいるはずなのに、そういう人たちはついぞ画面に映らない。虫だらけでそれどころじゃねーんだよバカ、と叫ぶのは登場人物ではなく映画そのものであり、映画は叫び続けながら最後の最後まで見事に走り切ってくれる。

スターシップ・トゥルーパーズ

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▲ 青春、試練、開戦、挫折、成長とテンポよく進んでいく物語。

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▲ そのスピード感を、劇中随所で流れる「地球連邦軍ニュース」があからさまに支える。世界観や細かな設定を 観客に手早く飲み込ませ、今何が起こっていてどういう段階にあるのかを的確に伝えるためのインサート・ムーヴィー。乱暴で安易なやり方がいっそすがすがしい。

この「地球連邦軍ニュース」のおかげもあって、映画の内側ではみんなひたすら一途で真面目なのに、一歩引いてみれば全てを皮肉と茶化しと嘲笑が包み込んでいて実に奇妙で壮大で爽快、こんなにも無駄がなくテンポのいいバカ映画は他にないのではないか。

そもそも無駄がない、というのはバーホーベンの映画にとっては異例のことだった。「ロボ・コップ」を、「トータル・リコール」を思い出してほしい。いずれも無駄の積み重ねで成り立っているような映画である。意味不明でグロテスクで素敵な無駄の過剰こそがバーホーベンの持ち味と認識していた当時の私は、対照的にスッキリと洗練された「スターシップ・トゥルーパーズ」の佇まいに大いに驚いた。もちろん、意味不明でグロテスクで素敵なのは相変わらずだったが、それらが「無駄」と切り離されて生き生きと展開していることに衝撃を受けたのだ。当時の私は高校二年生。ぜひ続編が見たいと願ったものだが、その願いは数年後に最悪の形で2度にわたって成就することになる。

たぶん無数の幸運な偶然が重なったことで生み出された奇跡の傑作、「スターシップ・トゥルーパーズ」。ツタヤとかに行けば「スター・ウォーズ」と同じサ行の棚にあるはずなので、ぜひついでに借りてみてほしい。


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