文・石鍋健太
先日、服屋でいいなと思う服を見つけ、8割がた買うつもりで手に取ってみていたら、店員さんが寄ってきて「それ、とても人気なんですよ」とにこやかに声をかけてくれました。それで私は「あ、そうなんですか」と返事して服を戻し、何も買わずにその店を立ち去りました。
なぜって、「とても人気」ということはつまりその服がたくさん売れて世の中に出回っているということであって、その台詞を聞いた途端、大勢の人がその服を着て街なかを歩いているところを想像してしまい、電車のなかとかで同じのを着た人と鉢合わせる可能性がすごく高そうな気がして、自分でもびっくりするほど買う気がなくなってしまったからです。
接客って難しいなあ、と思いました。私が単に偏屈で小心なだけかもしれませんが、世の中にはいろんな性格のいろんな人がいる上に、天気とか気分とかによって人々が求めるものはころころ変わるわけです。たった一言の台詞で8割の買う気を一瞬でゼロにしてしまうことだってある。
その点、古本屋の接客ははっきりいってだいぶ楽です。お客さんはほぼみんな本好きで、かつ静かに孤独に自由に本を探すのが好きな人たちです。それに古本屋の店員は毎日大量の本を触っていますが、お客さんの方が本の中身については詳しい場合が多いので、あえてこちらから「おすすめですー」なんていう必要もないのです。
もちろん本について質問されればなるべく丁寧にお答えしますし、気軽に話しかけてもらえるとうれしいものです。そうした店頭でのやり取りを通じて仲良くなることもあります。が、基本的にはこちらからお客さんに声をかけたりはしません。本を手に取ってパラパラ眺めている時に、「あっ、その本よく売れるんですよー」とか話しかけられたらいやでしょ。(服屋でもいやだと思うんだけどな・・・)
多くの人に「おっ」と思ってもらえるよう棚にしっかり本を揃えた時点で、古本屋のおもてなしはほぼ完結しているのです。
そして古本屋がよりよい棚をつくるためにいちばん必要なのは、いうまでもなく本です。日々たくさんの本を仕入れ、整理してきれいにして棚に出しておりますが、もっともっとたくさんの本を仕入れてもっともっと充実した本屋にしていきたいです。古本買取は随時受け付け中ですので、ご不用な本をお持ちの方はぜひお気軽にお問い合わせください。
本を探している人にも売りたい人にも、なるべく居心地よい空間を目指してがんばります。
どうぞよろしくお願いします!
古本買取については、こちらのご案内ページをご覧くださいませ。
電話でもメールでも店頭でも、随時受付中です。
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