「四年十一カ月と二日、雨は降りつづいた。」

9月7日の日曜日に行なわれました読書会、G・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』、無事終了いたしました。ご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。

『百年の孤独』は現在市販されている版で、450ページを超える量もさることながら、一筋縄ではいかない内容もあり、なかなか読み進むことができず、当店のスタッフも含め読破しきれずに読書会に参加された方も何人かおられました。ネタバレも構わず読書会は進行し、この作品の全貌が見えてくると、読み切れていない人たちは結末が知れてしまったことよりも、そんな面白い展開が待っているのかと想像力をかき立てられ、挫折しかけた読書欲が復活したようです。

古本買取クラリスブックス読書会『百年の孤独』

「今まで読んだ小説と違う」「1回読むとワクワク感、2回読んだときに去来する悲しみ」「幕の内弁当のよう」「匂い、熱さといった五感に訴えてくる」「メモを取りながら読んだが、自分のメモの内容がわからなくなる」等々。。。
雑誌で20世紀の世界文学の1位となった。幻想系の小説の規範として語られる。ラテン文学を世に知らしめた。ノーベル賞受賞。さまざまな側面からその評価が語られ、さまざまな動機から読者を誘うこの大作、やはり期待は裏切らず、語れど尽くせぬ読書会となりました。

古本買取クラリスブックス読書会『百年の孤独』

マルケスが創造したマコンドという町が歴史に翻弄される百年に及ぶ興亡。奇妙奇天烈な登場人物たちが織り成す波乱万丈の愛憎劇。近代から現代へとたどる物語であることは読んでいくうちにわかるのですが、どんどん現実の垣根を越えてゆくシュールな展開に頭がくらくらすることは必至です。
しかし、この山あり谷ありの展開をマルケスは大げさな表現をいっさいせず、終始淡々と物語を進めていきます。この文体は読む人皆の心をとらえるようで、今回の読書会でも多く語られることとなりました。若いころジャーナリスト時代に培った透徹した視線で、ただ事実を伝えるように描き、そこにある感情のうねりは読む人にゆだねる。この文体が『百年の孤独』の魅力を解く鍵のひとつなのではないでしょうか。

さて、今回皆の心をとらえたことがもうひとつあります。それは『百年の孤独』というタイトルの意味です。この「孤独」とは何ぞやということなのです。実はお恥ずかしい話、まだ読み終えていないのですが、読み終わった方の話を聴くに、読み終わると同時に読者自身に「孤独」感がどおっと押し寄せてくるそうなのです。うーんこれはもう最後まで読まずにはおれないなと思う次第でした。
『百年の孤独』というタイトルに関し、ひとりのかたがポツリとおっしゃった「これ、かっこいいでしょう。思いついたら絶対つけちゃいますよ」とひと言に全員笑顔の納得。冗談交じりですが百の解釈より説得力あるお言葉でした。

古本買取クラリスブックス読書会『百年の孤独』

「完璧に計算された20の章立て」「マコンドという場所について」「カリブ文学とアンデス文学の差異」「他のラテンアメリカ文学者との比較」「南米の歴史と文学」などなど、まあ3時間足らずの読書会では語りきれない作品でした。いろいろな宿題をもらった読書会になったと思います。私も含め読み切れずに参加した方はとにかく読み切りましょう。機会があればまた『百年の孤独』で集まりましょう。

「事実、雨は上がった。ある金曜日の午後二時、煉瓦の粉のように赤くざらざらした、しかも水のようにさわやかな太陽が、あっけらかんと照りだしたのだ。こうして十年間の旱魃が始まった。」

 

石村